タンパク質というと、運動や筋トレの後に、筋肉を増やしたい人が気をつけて摂るものというイメージがあります。
ところが、普通に生活していても、気をつけてタンパク質を摂っていないと、知らず知らずのうちにタンパク質が不足して体のいたるところに影響が出たり、症状として現れてくることがあるようです。

- 肌にハリがなく、たるんできた
- 髪がパサつく、ツヤがない
- 爪が割れやすい
- 気持ちが沈みがちになる
- 疲れやすく力が出ない
- 体がむくみやすい
- ダイエットの効果が現れにくい
どうですか?
思い当たるものがあれば、もしかしてそれはタンパク質が不足しているのかも知れませんよ。
今回は、なぜタンパク質の不足が老化につながるのか?
またどうして不足するのか?どうしたら不足しないのか?
そして、タンパク質の上手な摂り方などをご紹介していきます。
タンパク質の不足と老化の関係について
人の体は約10万種類ものタンパク質で構成されていて、体中の至るところでとても大切な働きをしています。
人の体の骨格や、筋肉、皮膚、毛髪、血液を作るもととなり、酵素やホルモン、免疫抗体の材料としての役割もあります。
このように身体を構成している、タンパク質が不足すると、筋力や体力の低下、骨量の減少、血管がもろくなる、免疫力も低下するなどの老化が促進されるばかりではなく、健康が維持できなくなり病気の原因となってしまいます。
例えば自覚しやすい症状として主に、次のようなものがあげられます。
毛髪
健康な髪を作ることができないので、髪の毛にツヤやハリがなくなり、薄毛や枝毛、切れ毛などになりやすくなります。
皮膚
肌の真皮の約7割を占めるコラーゲンもタンパク質の一種ですが、コラーゲンが減少すると肌のハリが失われ、シワや毛穴が目立ってきたりします。最近では、これら肌の老化は糖化の進行も大きな原因と言われています
内臓
血液により酸素を運び老廃物を回収する役割があるため、体力がなくなったり、慢性的な疲労感やめまい、頭痛などの原因になります。
神経
ホルモンや神経伝達物質もタンパク質で出来ているため、集中力が持続せず思考力が低下するなどの原因になります。
また、成長期の子供の場合は成長障害にもつながります。
高齢者の場合もタンパク質不足は深刻で、老化とともに体の中でタンパク質を作る力が弱くなるため、意識して積極的に良質のタンパク質を取らなければ栄養失調になり、さらに老化を加速させるケースがあるようです。
朝食を抜いたり、過度なダイエットによるエネルギーや栄養素の不足もタンパク質が不足する原因になると言われています。

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知ってるようで知らないタンパク質のこと
タンパク質は、体を構成する成分として欠かせない炭水化物、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつです。
タンパク質にはいろいろな種類があり、それぞれ体の中で目的に合わせた働きがあります。
主なタンパク質 | 役割 | 機能別種類 |
コラーゲン、エラスチン、ケラチン | 体の細胞や組織を作る | 構造タンパク質 |
カルモジュリン | 細胞内のタンパク質を調整する | 調整タンパク質 |
フェリチン、ヘモシデリン | 栄養素を貯蔵しておく | 貯蔵タンパク質 |
ヘモグロビン、アルブミン | 酸素や栄養を運び、老廃物の排出を促す | 輸送タンパク質 |
ペプシン、トリプシン | 酵素を作り出す | 酵素タンパク質 |
アクチン、ミオシン | 筋肉を弛緩、収縮させる | 弛緩タンパク質 |
これらタンパク質は、アミノ酸からできています。
そのアミノ酸は、他のアミノ酸と様々な形で結合して、体の目的に合わせたタンパク質を作り利用されています。
例えば、肌の水分保持の役割をしている成分やコラーゲンもタンパク質なのでアミノ酸から出来ています。
アンチエイジング用の化粧品などでもアミノ酸配合のものをよく目にすることはありますが、健康食品や飲料としてだけではなく様々な形で日々接することが多い成分です。

アミノ酸は、自然の中に約500種類あり、その中で人間の体に必要なアミノ酸は20種類です。
そのうち、11種類は体の中で合成されますが、残りの9種類は体の中で合成されないため、食事から摂る必要があります。
この9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といいます。それ以外の、11種類は非必須アミノ酸といいます。
必須アミノ酸の働きとタンパク質に再合成されるまでの過程
主にタンパク質の分解と合成を調整する役割を持つ必須アミノ酸
必須アミノ酸 | 働き | 必須アミノ酸を多く含む食品 |
バリン |
|
豚ロース、マグロ、
プロセスチーズ |
ロイシン |
|
カツオ、鶏むね肉、卵 |
イロソイシン |
|
マグロ、豚ロース赤身、卵 |
その他の必須アミノ酸
必須アミノ酸 | 働き | 必須アミノ酸を多く含む食品 |
スレオニン |
|
マグロ、豚ロース赤身 |
メチオニン |
|
マグロ、鶏むね肉、豆乳 |
リジン |
|
真アジ、凍り豆腐 |
ヒスチジン |
|
青魚 |
フェニルアニリン |
|
牛レバー、マグロ、鶏むね肉 |
トリプトファン |
|
カツオ、牛・豚のレバー、卵 |
特にリジンは植物性タンパク質に含まれる量が少ないため、動物性タンパク質から摂る必要があります。
以上のように、必須アミノ酸は、体の臓器や神経伝達物質、ホルモンなど体中に影響を与える物質なのです。
これらの必須アミノ酸を含む食品を食べた後、タンパク質が体内でできる過程は次の通りです。
- タンパク質を含む食品を食べるとアミノ酸に分解され小腸で吸収される
- その後、アミノ酸は血液から肝臓へ送られる
- いったん、血液中や肝臓にアミノ酸がプールされる
- 体内で合成されるアミノ酸(非必須アミノ酸)と混じり合う
- 種類の違うアミノ酸が目的に合わせて結合する
- タンパク質が改めて作リ直されて、全身で利用される
このとき、アミノ酸の種類のうち1つでもかけるとタンパク質を作ることができません。そのため、食事からしか摂ることのできない必須アミノ酸が、不足しないように注意する必要があるのです。

タンパク質の一日の必要量と不足の原因
一日で必要なタンパク質の摂取量はどれくらいなのでしょうか。
厚生労働省摂取量基準
- 18才以上の女性の平均必要量…40g
- 推奨量…50g
それでは、一般的な現代女性の実際の摂取量は?
一般女性の実際の摂取量
平成28年国民健康・栄養調査報告…一日平均60g以上
このように平均的な摂取量を見ると、タンパク質が不足しているようには見えない結果です。
しかし、一方では糖質制限や脂質を減らした食事などで、摂取カロリーが不足するとエネルギーの不足分を、体は筋肉を分解して使ってしまうのです。
そして、その筋肉を修復するためにタンパク質が必要となり、代謝で失われたタンパク質を補うことが出来ず、結果的にタンパク質が不足する可能性があるといわれています。
もう一つの原因として、ダイエットをしていなくても、炭水化物中心の食事やジャンクフードなど偏った食生活でも、必須アミノ酸の摂取が十分ではないため、タンパク質を再合成できないという原因もあるようです。

タンパク質を作るために必要な食品は?

20種類全てのアミノ酸が体の中にある状態にしておくためには、どの食品に必須アミノ酸が含まれているのかを知る必要がでてきます。
ここで、目安となるのがアミノ酸スコアです。
これは、食品に含まれる必須アミノ酸の充足率を数値で表したものです。必須アミノ酸(9種類のアミノ酸)の全てがバランスよく含まれている食品はスコアが一番高く100となります。
また、アミノ酸スコアが100の必須アミノ酸がバランスよく含まれている食品は、良質のタンパク質食品となります。
タンパク質には、動物性タンパク質と植物性タンパク質がありますが、それぞれ主な食品のスコアを見てみましょう。
主な食品のアミノ酸スコア
動物性タンパク質の食品とアミノ酸スコア
動物性タンパク質の食品 | アミノ酸スコア |
牛肉・豚肉・鶏肉 | 100 |
魚類 | 100 |
卵 | 100 |
牛乳 | 100 |
ヨーグルト | 100 |
プロセスチーズ | 91 |
植物性タンパク質の食品とアミノ酸スコア
植物性タンパク質の食品 | アミノ酸スコア |
精白米 | 65 |
玄米 | 68 |
大豆 | 100 |
豆腐 | 100 |
納豆 | 100 |
じゃがいも | 68 |
里芋 | 84 |
トマト | 48 |
きゅうり | 66 |
ほうれん草 | 50 |
みかん | 50 |
上の表のとおり、
動物性タンパク質は、アミノ酸スコアの高い、必須アミノ酸のバランスがいい良質なタンパク質といえます。
植物性タンパク質は、大豆製品以外は、必須アミノ酸が不足しているものが多いため、数値が低くなっています。ただし、単体では、スコアが低くても他の食品との組み合わせで100を目指すことはできます。
ポイント
ここで注意しなければならないのが、スコアを気にして肉や魚を過剰に食べ過ぎると脂質として蓄積してしまいます。また、アミノ酸をタンパク質に再合成するときに必要なビタミンB群や、ビタミンC、E、カルシウム、などの栄養素も一緒に摂ることができるよう、植物性タンパク質もバランスよくメニューに加える必要があります。

良質なタンパク質と一緒に取りたい栄養素
特に、摂取したアミノ酸が体の中で有効に利用するためにはビタミンB6のサポートが必要です。
ビタミンB6はアミノ酸からタンパク質を合成する過程で必要になる酵素です。
ビタミンB6を多く含む食品
- 魚…マグロ(赤身、トロ)、カツオ、さんま
- 肉…牛レバー、鶏肉(ひき肉、ささみ、レバー)
- 野菜…赤ピーマン、ししとうがらし、にんにく
- その他…バナナ、玄米、ピスタチオ
これらの食品は、タンパク質の代謝を促しますので、筋肉を増やすために、プロテインのサプリメントやゼリーなどを摂取している人は充分に摂りましょう。
タンパク質を上手に摂ろう!
- タンパク質は私たちの体を構成している重要な栄養素である
- そのタンパク質はアミノ酸からできている
- そのアミノ酸の中に、食べ物からしか摂ることができない必須アミノ酸がある
- 必須アミノ酸をバランスよく含んだ食品は、肉、魚、乳製品、大豆製品である
- その必須アミノ酸が一つでも欠けると、タンパク質に再合成されない
- すると、タンパク質が不足して、体のいろいろな所に影響がでる
ということが分かりました。
タンパク質は体内で分解と合成を繰り返しています。
分解されたアミノ酸は合成や修復に必要な分だけ使われて、余分なアミノ酸は一旦腎臓に入りその後は体外に排出されていきます。
そのため、日々適切な量を取り続ける必要があるのです。
ここでは、効率のいいタンパク質の摂り方をご紹介します。
朝のタンパク質
朝食でタンパク質を摂ることはとても大切です。
それは、寝ている間にタンパク質が体の修復に使われてしまうため、朝はタンパク質がなくなっている状態だからです。
忙しくて、パンとコーヒーだけで済ませてしまったり、食べなかったりすると、寝ている間に使ってしまったタンパク質が補えません。
できれば、朝食はちきんと、良質なタンパク質を摂りたいところです。

ただ、朝からお肉やお魚の調理にかける時間がなければ、ご飯に納豆でも、必須アミノ酸は摂れますし、糖質でエネルギーの補給や、納豆で貧血の予防もできます。また、パン食なら卵と牛乳を一緒に摂ると良いでしょう。

夜のタンパク質
効率的に、タンパク質を吸収させるには夕食に良質なタンパク質をとりましょう。
肉や魚は、肌のハリを支えるコラーゲンの材料になります。
良質なタンパク質をとるために、肉や魚の代わりに豆腐だけ食べる人もいますが、鶏のささみ1本分と同じ量のタンパク質を豆腐から摂ろうとすると約1丁を食べる必要があります。
動物性タンパク質のほうがタンパク質の含有量が多いため、効率がよく脂質も一緒に摂取できます。
また、肉や野菜を食べるときの付け合せとして緑黄色野菜を温野菜にして一緒に食べると、サラダに比べ体を冷やさない上、効率よくビタミンを摂ることができます。
ダイエット中なら、炭水化物を減らして、肉、魚、乳製品を中心に就寝の2時間前までに済ませておきましょう。
寝ている間に、分泌される成長ホルモンがタンパク質の吸収を促進してくれるのです。
栄養が偏りがちな場合は、コンビニで手軽に買える、サラダチキンや、ゆで卵、豆乳、チーズなどを上手に利用しましょう。
また最近は、いろんな種類のプロテインやアミノ酸のサプリメント、ドリンクなども販売されています。
美肌や骨を強くするためのプロテインや、腹持ちがよくダイエットの一食置き換えなどにも使えるプロテイン、また肌だけでなく骨、関節などにも効果があるコラーゲンのサプリメントなどもあります。
自分に必要な目的で選べて、食事で取るよりも吸収が早く、なんといっても調理することなく、簡単に生活にとりいれることができますよ。

体の不調や、肌、髪などの不調に効果的なおすすめ食材
体の不調のときには、まず食べるものを意識しましょう。
食材に含まれる栄養分が症状をやわらげたり、悩みの解消に役立ちます。食材に含まれる栄養素も参考にしてください。
冷え性改善に効果的な食材
冷え性を改善するには、血液循環をよくして代謝を高め、体温を上げる必要があります。
おすすめの食材
豚肉、鶏肉、とうがらし
- タンパク質には体を温める効果もあります。
- 豚肉には、エネルギーを生み出す力をサポートする、ビタミンB1、2、ナイアシンが含まれています。また、疲れやすく体がだるいときにもビタミンB1は糖質を促す作用があるので効果的です。
- 鶏肉は、良質なタンパク質が多く含まれます。
- とうがらしに含まれるカプサイシンにはエネルギーを熱に変える性質があります。
二日酔いに効果的な食材
飲みすぎると肝臓がアルコールを処理しきれなくなるので、二日酔いになります。このため、傷付いた肝臓を修復する必要があります。
ポイント
鶏肉、魚、卵、大豆、にんじん、じゃがいも
- 鶏肉、魚、卵、大豆の良質なタンパク質は、傷付いた細胞の修復に効果的です。
- にんじんに含まれるカロテンに抗酸化作用があります。また、アルコールにより失われる葉酸も豊富に含まれます。
- じゃがいもには、アルコールの利尿作用で失ったカリウムが含まれます。また、葉酸も多く含まれています。
髪がパサつくとき、頭皮のために食べたい食材
髪の主成分は、ケラチンというタンパク質です。このため、髪を健康に保つためには良質なタンパク質が効果的です。
ポイント
豚肉、ブリ、かいわれ大根
- 豚肉には、健康な髪や肌に必要なケラチンとビタミンB2、ナイアシンも含まれている。
- ブリには、良質なタンパク質と、EPA、DHA、ビタミンEが含まれ、頭皮の血行促進に効果的です。
- かいわれ大根には、毛細血管の血行を促進する効果があるビタミンEが豊富に含まれています。ビタミンEはその他強い抗酸化作用があるため、髪や頭皮の老化の防止にも効果的です。
肌荒れ改善にはやっぱりコレ!
肌が不調の原因は、主にコラーゲンが関わります。コラーゲンの材料となるタンパク質とコラーゲンの合成をサポートするビタミンCを摂りましょう。
おすすめの食材
牛肉、チーズ、トマト
- 牛肉には、良質なタンパク質を含むと同時に、肌の健康にかかせないナイアシンが豊富に含まれています。
- チーズなどの乳製品には、良質なタンパク質と肌の再生に必要なビタミンB2が含まれています。
- トマトは、コラーゲンの合成を促すビタミンCが豊富に含まれています。また、リコピンの抗酸化力も含まれるのでアンチエイジングには欠かせない食材です。
このように、私たちの体にとって重要な役割をしているタンパク質。
年齢を重ねれば作り出す力は弱まりますが、日々の食事で肉や魚、野菜をバランスよく取り入れれば、不足することはありません。もし、いま体に不調がでている場合は食生活を見直す必要があるのかも知れません。
食生活が乱れやすい場合はサプリメントなどを利用するなどして、タンパク質を味方につけて体の中からアンチエイジングしましょう。